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掲載日:2023.11.15
複数の固定資産を交換した場合の交換の特例について
 
複数の固定資産を交換した場合の所得税法第58条に規定する交換の特例の適用について

国税庁HPの文書回答事例に「複数の固定資産を交換した場合の所得税法第58条に規定する交換の特例の適用について」が公表されました。

概要としましては、複数の譲渡資産と複数の取得資産があり、それらについて所得税法第58条に規定する交換の特例の適用固定資産を交換する場合には、複数の譲渡資産の合計額と複数の取得資産の合計額の交換差額が20%以下であれば(他の要件を満たしていることを前提とする)、譲渡所得の課税の繰延べを行うことができます。
所得税法第58条に規定する交換の特例の適用要件は以下の通りです。
(1)交換により譲渡する資産および取得する資産は、いずれも固定資産であること。不動産業者などが販売のために所有している土地などの資産(棚卸資産)は、特例の対象になりません。
(2)交換により譲渡する資産および取得する資産は、いずれも土地と土地、建物と建物のように互いに同じ種類の資産であること。この場合、借地権は土地の種類に含まれ、建物に附属する設備および構築物は建物の種類に含まれます。
(3)交換により譲渡する資産は、1年以上所有していたものであること。
(4)交換により取得する資産は、交換の相手が1年以上所有していたものであり、かつ交換のために取得したものでないこと。
(5)交換により取得する資産を、譲渡する資産の交換直前の用途と同じ用途に使用すること。


 以下、文書回答事例の内容です。

1 事前照会の趣旨及び事実関係
照会者は、計7か所の宅地(以下「本件各土地」といいます。)を照会者の兄と共有で所有しているところ、その共有状態を解消してそれぞれが本件各土地を単独所有とするために、一の交換契約により、本件各土地に係る共有持分の一部を交換(以下、「本件交換」といい、かかる契約を「本件交換契約」といいます。)することを予定しており、具体的な内容は次のとおりです。

① 照会者は、兄に対し本件各土地のうち4か所の土地(以下「本件各譲渡土地」といいます。)に係る共有持分を交換に係る譲渡資産として譲渡する。
② 照会者は、兄から本件各土地のうち本件各譲渡土地を除く3か所の土地(以下「本件各取得土地」といいます。)に係る共有持分を交換に係る取得資産として取得する。
③ 本件各取得土地の価額の合計額は本件各譲渡土地の価額の合計額を上回るが、その差額(以下「本件交換差額」といいます。)について金銭その他の資産の授受は行わない。
 ところで、所得税法第58条《固定資産の交換の場合の譲渡所得の特例》に規定する特例(以下「交換特例」といいます。)の適用に当たっては、同条第2項において譲渡資産の価額と取得資産の価額との差額が20%を超える場合には適用しない旨の規定(以下「交換差額要件」といいます。)が設けられています。この点、本件交換の場合、本件各土地の価額につき個々の資産ごとに交換差額要件の判定をすると、組み合わせによってはその差額が20%を超える場合が生じますが、複数の譲渡資産と複数の取得資産の交換の場合における交換差額要件の判定はそれぞれの資産の合計額に基づき行われ、本件交換差額が本件各取得土地の価額の合計額の20%以下となる場合には、交換差額要件を満たすものと解して差し支えないでしょうか。
 なお、本件各譲渡土地及び本件各取得土地に係る各価額は適正な時価であること、いずれの土地についても本件交換後も引き続き宅地として利用されること、並びにその他の交換特例の適用に係る要件は全て満たしていることを照会の前提とします。

2 事前照会者の求める見解となることの理由
 「交換」とは、金銭の所有権以外の財産権を相互に移転することを目的とする契約であることから(民法第586条)、「交換」も譲渡の一形態であり、2つの売買契約を単一化した契約とみることができるので、資産を時価で譲渡し、資産を時価で取得したとみれば、本質的にはキャピタルゲインに対し課税すべきこととなります。
 しかし、従前から所有している固定資産を同種の固定資産と交換し、交換取得資産を交換譲渡資産と同様の用途に供しているような場合には、実質的には同一の資産を継続して保有し、経済的には資産の移転がなかったと同様の状態が継続しているものとみることもでき、課税の機会とみるのが適当でない場合もあり、また、担税力の観点からみても、交換によってキャピタルゲインに相当する金銭を取得したわけではない当事者に譲渡益について課税することは、酷な結果をもたらすこともあり得るため、交換特例は、一定の要件を満たす交換については、譲渡がなかったものとみなして、譲渡益に対する課税を繰り延べ、その時点では課税を行わないこととしたものと解されています。
 また、交換差額要件を設けた趣旨については、上記のとおり「交換」は本来金銭を介在せしめない取引をいうものと解されるところ、実際には交換譲渡資産と交換取得資産との時価が異なるため、その差額について金銭で決済するという例は多いことから、上記の交換特例の趣旨を踏まえ、交換譲渡資産と交換取得資産の差額が一定の場合に限り交換特例の適用を認めることとして当該要件が設けられたものであると考えられます。
 ところで、譲渡所得の金額は、その年中の当該所得に係る総収入金額から当該譲渡資産の取得費とその譲渡費用との合計額を控除して計算するところ(所法332)、譲渡所得の総収入金額は、その年において収入すべき金額であり、それが金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもって収入される場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額とされています(所法361)。このため、土地の交換による収入金額は、交換により取得した土地の価額となり、一の交換契約により取得した土地が複数である場合には、それらの土地の価額の合計額となります。
 そうすると、複数の土地を一の交換契約で交換した場合、交換特例を適用しなければ交換取得資産の価額の合計額を収入金額として譲渡所得の課税関係が生じるところ、上記のとおり交換特例は交換差額が一定の範囲内の場合に譲渡所得(キャピタルゲイン)課税の繰延べを行うものであることからすれば、交換差額要件の判定は、一の交換契約により譲渡所得の課税関係が生じるとした場合の収入金額に基づき判定することが相当と考えられます。
 この点、本件交換は、本件各土地の共有状態を解消し、本件各土地をそれぞれが単独所有とするために、一の交換契約により本件各譲渡土地と本件各取得土地とを交換するものであることから、本件交換に係る交換差額要件の判定は、本件各取得土地の価額の合計額と本件各譲渡土地の価額の合計額との差額に基づき判定することが、交換特例の趣旨等に照らしても相当と考えられます。


3 その他
なお、文書回答事例は、照会に係る事実関係が異なる場合又は新たな事実が生じた場合は、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあり、また、回答内容は東京国税局としての見解でありことにご留意ください。

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