掲載日:2023.12.18
令和6年度税制改正大綱(定額減税について)
令和6年度税制改正大綱(定額減税について)
令和5年12月14日、税制改正大綱が公表されました。
扶養控除の縮小、ひとり親控除の拡大、一般の生命保険料控除の拡大、賃上げ税制や交際費課税の改正などありますが、今回は、定額減税についてご紹介します。
給与所得者については、1人あたり4万円、令和6年6月1日以後に支払われる給与に係る源泉徴収、住民税特別徴収時に控除されます。特別控除額が、その後の所得金額の異動などにより異なることとなった場合には年末調整で調整します。1人あたり4万円ですが、配偶者や扶養親族などの要件もありますので、家族の人数分だけ、世帯主に定額減税があるということではありません。定額減税の適用を受けた者については、給与明細や源泉徴収票にその旨を記載することとされています。
事業所得者等については、予定納税額から特別控除が適用されます。予定納税の納期限や予定納税額の減額の承認の申請の期限も変更されます。予定納税がない場合には、確定申告のときに特別控除が適用されます。
また、所得が1,805万円超の場合は対象外とされてします。これは高額所得者を除外するため、また、国会議員を除外するためとも言われています。
以下、税制改正大綱の定額減税に関する部分です。
(1)定額減税の趣旨
所得税・個人住民税の定額減税により、今後の賃金上昇と相まって、目に見える形で可処分所得を伸ばす。
デフレに後戻りさせないための措置の一環として、令和6年の所得税・個人住民税の定額減税を実施し、賃金上昇と相まって、国民所得の伸びが物価上昇を上回る状況をつくり、デフレマインドの払拭と好循環の実現につなげていく。具体的には、納税者(合計所得金額 1,805 万円超(給与収入のみの場合、給与収入 2,000 万円超に相当)の高額所得者については対象外とする。)及び配偶者を含めた扶養家族1人につき、令和6年分の所得税3万円、令和6年度分の個人住民税1万円の減税を行うこととし、令和6年6月以降の源泉徴収・特別徴収等、実務上できる限り速やかに実施することとする。なお、定額減税による個人住民税の減収額は、全額国費で補塡する。
(2)定額減税の具体的内容
(国 税)
令和6年分の所得税について、定額による所得税額の特別控除を次により実施する。
(1)居住者の所得税額から、特別控除の額を控除する。ただし、その者の令和6年分の所得税に係る合計所得金額が 1,805 万円以下である場合に限る。
(2)特別控除の額は、次の金額の合計額とする。ただし、その合計額がその者の所得税額を超える場合には、所得税額を限度とする。
① 本人 3万円
② 同一生計配偶者又は扶養親族(居住者に該当する者に限る。以下「同一生計配偶者等」という。) 1人につき 3万円
(3)特別控除の実施方法は、次による。
① 給与所得者に係る特別控除の額の控除
イ 令和6年6月1日以後最初に支払を受ける給与等(賞与を含むものとし、 給与所得者の扶養控除等申告書の提出の際に経由した給与等の支払者が支払うものに限る。)につき源泉徴収をされるべき所得税の額(以下「控除 前源泉徴収税額」という。)から特別控除の額に相当する金額(当該金額 が控除前源泉徴収税額を超える場合には、当該控除前源泉徴収税額に相当 する金額)を控除する。
ロ 特別控除の額に相当する金額のうち、上記イ及びここに定めるところにより控除をしてもなお控除しきれない部分の金額は、以後令和6年中に支 払われる当該給与等(同年において最後に支払われるものを除く。)に係る控除前源泉徴収税額から、順次控除する。
(注1)上記イ及びロにより控除する同一生計配偶者等に係る特別控除の額は、原則として源泉控除対象配偶者で合計所得金額が48万円以下である者又は扶養親族で居住者に該当する者について算出する。
(注2)源泉徴収の際の上記イ及びロによる控除は、現行の源泉徴収をされるべき額から行う。
(注3)上記イ及びロについて、給与所得者の扶養控除等申告書に記載した事項の異動等により特別控除の額に異動が生ずる場合には、年末調整により調整する。
ハ 上記イ及びロにより控除された後の所得税額をもって、それぞれの給与等につき源泉徴収をされるべき所得税の額とする。
ニ 令和6年分の年末調整の際に、年税額から特別控除の額を控除する。
ホ 上記イ及びニによる控除について、給与等の支払者が同一生計配偶者等を把握するための措置を講ずる。
へ 上記イの給与等の支払者は、上記イ又はロによる控除をした場合には、支払明細書に控除した額を記載することとする。
ト 上記イの給与等の支払者は、源泉徴収票の摘要の欄に控除した額等を記載することとする。
② 公的年金等の受給者に係る特別控除の額の控除
イ 令和6年6月1日以後最初に厚生労働大臣等から支払を受ける公的年金等(確定給付企業年金法の規定に基づいて支給を受ける年金等を除く。) につき源泉徴収をされるべき所得税の額について、上記①イからハまで (上記①ロ(注3)を除く。)に準じた取扱いとする。
(注)上記イについて、公的年金等の受給者の扶養親族等申告書に記載した 事項の異動等により特別控除の額に異動が生ずる場合には、確定申告により調整する。
ロ 上記イの公的年金等の支払者は、源泉徴収票の摘要の欄に控除した額等を記載することとする。
③ 事業所得者等に係る特別控除の額の控除
イ 令和6年分の所得税に係る第1期分予定納税額(7月)から本人分に係る特別控除の額に相当する金額を控除する。
ロ 特別控除の額に相当する金額のうち、第1期分予定納税額から控除をしてもなお控除しきれない部分の金額は、第2期分予定納税額(11 月)から控除する。
(注)予定納税に係る上記イ及びロによる控除は、現行の納付すべき額から行う。
ハ 予定納税額の減額の承認の申請により、第1期分予定納税額及び第2期分予定納税額について、同一生計配偶者等に係る特別控除の額に相当する金額の控除の適用を受けることができることとする。
ニ 上記ハの措置に伴い、令和6年分の所得税に係る第1期分予定納税額の納期を令和6年7月1日から9月30日までの期間(現行:同年7月1日 から同月 31 日までの期間)とするとともに、同年6月 30 日の現況に係る 予定納税額の減額の承認の申請の期限を同年7月 31 日(現行:同月 15 日)とする。
ホ 令和6年分の所得税に係る確定申告書を提出する事業所得者等は、その提出の際に所得税額から特別控除の額を控除する。
(地方税)
令和6年度分の個人住民税について、定額による所得割の額の特別控除を次により実施する。
(1)納税義務者の所得割の額から、特別控除の額を控除する。ただし、その者の令和6年度分の個人住民税に係る合計所得金額が 1,805 万円以下である場合に限る。
(2)特別控除の額は、次の金額の合計額とする。ただし、その合計額がその者の所得割の額を超える場合には、所得割の額を限度とする。
① 本人 1万円
② 控除対象配偶者又は扶養親族(国外居住者を除く。) 1人につき 1万 円
(注)控除対象配偶者を除く同一生計配偶者(国外居住者を除く。)については、令和7年度分の所得割の額から、1万円を控除する。
(3)特別控除の実施方法は、次による。
① 給与所得に係る特別徴収の場合
イ 特別徴収義務者は、令和6年6月に給与の支払をする際は特別徴収を行わず、特別控除の額を控除した後の個人住民税の額の 11 分の1の額を令和6年7月から令和7年5月まで、それぞれの給与の支払をする際毎月徴収する。
ロ 地方公共団体は、令和6年度分の給与所得に係る個人住民税の特別徴収税額通知(納税義務者用)に控除した額等を記載することとする。
ハ 特別徴収義務者は、令和6年分の給与支払報告書の摘要の欄に所得税額から控除した額等を記載することとする。
② 公的年金等に係る所得に係る特別徴収の場合
イ 令和6年 10 月1日以後最初に厚生労働大臣等から支払を受ける公的年金等につき特別徴収をされるべき個人住民税の額(以下「各月分特別徴収 税額」という。)から特別控除の額に相当する金額(当該金額が各月分特 別徴収税額を超える場合には、当該各月分特別徴収税額に相当する金額)を控除する。
ロ 特別控除の額に相当する金額のうち、上記イ及びここに定めるところにより控除をしてもなお控除しきれない部分の金額は、以後令和6年度中に 特別徴収される各月分特別徴収税額から、順次控除する。
ハ 地方公共団体は、令和6年度分の公的年金等に係る所得に係る個人住民税の税額決定通知書に控除した額等を記載することとする。
ニ 特別徴収義務者は、令和6年分の公的年金等支払報告書の摘要の欄に所得税額から控除した額等を記載することとする。
③ 普通徴収の場合
イ 令和6年度分の個人住民税に係る第1期分の納付額から特別控除の額に相当する金額(当該金額が第1期分の納付額を超える場合には、当該第1期分の納付額に相当する金額)を控除する。
ロ 特別控除の額に相当する金額のうち、上記イ及びここに定めるところにより控除をしてもなお控除しきれない部分の金額は、第2期分以降の納付 額から、順次控除する。
ハ 地方公共団体は、令和6年度分の個人住民税の税額決定通知書に控除した額等を記載することとする。
(4)道府県民税及び市町村民税における特別控除の額は以下のとおりとする。
① 道府県民税における特別控除の額は、特別控除の額に、その者の道府県民税所得割の額をその者の道府県民税所得割の額と市町村民税所得割の額との合計額で除して得た数値を乗じて得た金額とする。
(注)上記の「道府県民税所得割の額」とは、特別控除の額を控除する前の道府県民税所得割の額をいい、上記の「市町村民税所得割の額」とは、特別控除の額を控除する前の市町村民税所得割の額をいう。
② 市町村民税における特別控除の額は、特別控除の額から道府県民税における特別控除の額を控除して得た金額とする。
(5)特別控除の額は、他の税額控除の額を控除した後の所得割の額から控除することとする。
(6)以下の額の算定の基礎となる令和6年度分の所得割の額は、特別控除の額を控除する前の所得割の額とする。
① 都道府県又は市区町村に対する寄附金税額控除(ふるさと納税)の特例控除額の控除上限額
② 公的年金等に係る所得に係る仮特別徴収税額
(7)特別控除による個人住民税の減収額は、全額国費で補塡する。
(8)その他所要の措置を講ずる。
(注)今回の特別控除の緊要性に鑑み、これを円滑かつ早急に実施するため、総務省は直ちに必要な準備作業に着手すること。具体的には、地方公共団体や特別徴収義務者が早期に準備に着手できるよう、法案の国会提出前であっても、制度の詳細についてできる限り早急に公表するとともに、関係省庁ともよく連携しながら、制度の趣旨・内容等について、丁寧な周知広報を行うこと。