合同会社(LLC=limited liability company)のすすめ
2006年02月23日
平成17年3月22日に新会社法として成立した「合同会社(LLC)」は、会社法全体の枠内での議論が未成熟ということで、施行は本年5月1日予定となるそおです。
いずれにしても間もなく日本版「LLC」が始まることは間違いありません。
人間主体の頭脳産業時代における、事業の健全な発展を図り、産学連携を推進し、研究開発などを活性化し、新事業を創出したり、企業の創業支援をするための最適の企業組織として「合同会社(LLC)」を活用することはまことに重要であります。
1、なぜ?なんのために
長い間続いてきた「工業時代」は終焉し、人間社会が今まで経験しなかった「人間主体の頭脳産業時代(米国経済学者・レスターサロー説)」がもうとっくに始まっています。 IT革命の進展により、ビジネスの主権が供給者(サプライヤー)から消費者(コンシューマー)へと移り、今は、消費者中心市場が出現しています。
それは、ビジネスの流れを個別タテ型から複合ヨコ型へと劇的に変化させています。
工業時代のビジネスの流れはサプライヤーが主権者でしたから、供給するモノやサービス毎にそれぞれ独立した企業が看板を掲げて商売をする、所謂「タテ型ビジネス」でした。
人間主体の頭脳産業時代(別名・知識産業時代)では、インターネットの驚異的な発達により主権がサプライヤーからコンシューマーへと移る顧客中心市場となってしまったので、すべてのビジネスが顧客ニーズを満足させるために、従来の個別タテ型企業を串刺しにして、複合ヨコ型組織を形成していく流れとなっていきます。 わかりやすくいうと、一人の顧客のニーズを満足させるために、たくさんの供給側企業がヨコ一列に並んで協力しあいワンストップサービスを実現する「ヨコ型ビジネス組織」(例えば、建設業におけるゼネコン企業のように)があらゆる業域に亘って始まっていく、ということです。
そしてそのための企業形態として法的に最も望ましいものが「LLC」であります。
従来の「株式会社」は、物的資産に重点を置いた組織で、出資者(資本家)が所有者であり、ほかに経営者と従業員とあって三者それぞれに利害関係の対立があります。
これに対し「合同会社(LLC)」は、人的資産に重点を置いた組織で、出資者が所有者であると同時に経営者となり従業員でもあるので、企業内部の利害対立がありません。
近年、アイデア・ノウハウ・知的財産権などの無形資産が企業価値の大半を占めるようになってきました。その無形資産を生み出す源は人的資産であります。
人間主体の頭脳産業時代は、すべての企業が人的資産の蓄積を図ることになります。
そして組織に属する人の能力・自発性の引き出しが重要であり、そのための環境整備の必然性から、アメリカ・イギリスなど先進国ではもうとっくに始まっている新会社法制度としての日本版「LLC」の登場となったものであります。
同じような組織として「有限責任事業組合(LLP)」(平成17年4月27日法律成立、8月施行)があります。これは組合組織で、出資者全員が有限責任制で事業に参画すること、損益の配分については組合員間で協議し実体に応じた柔軟な配分ができること、はLLCと同じですが、税務面では、LLCが法人課税であるのに対しLLPでは組合員それぞれ個別に直接課税する構成員課税(パススルー課税)となります。
2、日本版「LLC」とは、どのようなものか
出資者(所有者)が、経営者であり、従業員であるから……
①従来の株式会社のような、内部の利害対立関係(株主/経営者/従業員)がありません。
②LLCでは、出資者による協議体(社員総会)だけが内部の機関となります。その社員総会で、会社運営のための内部のルールを定款の中に自由に決めることができます。
株式会社と異なり、組織内部の約束事を自由に決められるので目的に応じた組織を作ることができ、シンプルで機動性のある事業運営を実現し、事業目的の遂行に専念できます。
③LLC運営に関わる意志決定については、全社員に重要な影響を及ぼす事項、例えば、定款の変更、社員の増減、出資持分の譲渡などについては、社員全員の同意をもって決定します。
④LLCの業務執行については、原則として社員全員に業務を執行する権限があります。社員が複数の場合、その過半数で決めます。日常業務については各社員が単独で行えます。
⑤LLCの運営に関わる重要事項の意志決定や業務執行については、原則として出資者全員の一致が必要であります。しかし、全員一致では出張や病気その他の理由で不在の者がいた場合は業務の円滑な執行が阻害されることがあります。
このような場合に対してLLCでは定款などに定めれば、特定の者に意志決定権限や業務執行権限を与えることができます。
⑥LLCでは、柔軟な損益配分を行うことにより、事業に対するモチベーションを高めることができます。株式会社では、誰がいくら出したかという出資割合が、重要事項の決議をするための議決権割合や損益の配分割合となります。LLPでは、定款の中などでこれらの割合を自由に決めることができます。従って、事業参加の様々な貢献に対して応分の損益配分が可能となり参加者の事業に対するモチベーションを高めることができます。